事業紹介

新しい生活様式に対応した公共交通の利用環境構築事業

福島県会津若松市

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事業の概要

新しい生活様式に対応した公共交通の利用環境構築事業
  • 事例集番号

    25

  • 地域未来構想20

    ⑪地域交通体系

  • 事業実施時期

    令和2年8月~令和3年3月

  • 総事業費

    10,000千円

現在、市内の路線バスについてはバスロケーションシステムが導入され、時刻や運賃などの検索のみならず、バスの現在地を事業者の専用サイトでリアルタイムで確認できるとともに、その情報をしオープンデータ化することで、Googleマップ等の汎用スマートフォンアプリでも情報が確認できるサービスが提供され、利便性向上に繋がっている。一方で、近年多発する自然災害による臨時運休などが発生した場合の情報をリアルタイムで反映することが出来ていない課題があり、事業者のHPや営業所の掲示で確認しなければならない現状にある。また、コロナ禍における密を回避した公共交通の利用を促していくために車内の混雑情報を提供するサービスも求められていることから、運休情報や車内混雑情報のリアルタイムでの提供を、路線バスのみならず、鉄道やデマンド交通なども含めてMaaSのシステムと一体的に可能とする利用環境の構築を図る。

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事業の背景

新型コロナウィルス感染症の影響によって、生活利用者が減少するだけでなく、本市の公共交通の利用を下支えしていた観光客、とりわけ教育旅行やインバウンドの利用が大きく減少し、一部路線バスでは運休を余儀なくされている。影響の長期化により、人の移動の減少や密を避けるなどの行動変容が起きている中で、ICTを活用した新しいサービス形態やキャッシュレス化などを進めていくことで、コロナ禍においても、安心して公共交通の利用が選択される新しい生活様式に対応した公共交通の利用環境を構築していくことが必要である。

  • 首長インタビュー

    室井照平
    福島県会津若松市長室井照平
    with・afterコロナを見据えた取組を意識して行なっていく

    この事業の全体像ですが、大きく二つの事業から構成しています。一つは新型コロナウイルス感染拡大の影響で人の移動が少なくなり、非常に厳しい経営環境にあった交通事業者を守るための「緊急支援金事業」です。これは、市民生活上の移動手段を維持していくために必要な取り組みでした。そして、もう一つが今回注目事業として取り上げていただいている「新しい生活様式に対応した公共交通の利用環境構築事業」です。この当面の交通事業者への支援とwith・afterコロナを見据えた公共交通の利用環境の構築を両輪で行なったところが本市の特徴ですね。
     
    コロナ対策では、どの分野でも当面必要な支援や対策と、with・afterコロナを見据えた取組を意識して行なっていくことが必要です。本市でも給付金や緊急経済対策にあわせて、小中学校のICT環境の整備やデジタルガバメントへの移行に向けた調査事業など、様々な分野で臨時交付金を活用して実施させていただいております。
     
    なかでも公共交通の分野における今回注目いただいている事業は、こうした考えを一つの事業に落とし込んだモデル的なものになるのではないかと思い、取り組んできたところです。


    スマートシティ会津若松

    本市では、2013年より「スマートシティ会津若松」を掲げ、ICTを健康や福祉、教育、防災、エネルギー、環境といった生活を取り巻く様々な分野で活用することで、持続力のある力強い地域社会と、安心して快適に暮らすことのできるまちづくりを進めてきました。2019 年には、産官学連携の拠点となるICTオフィスビス「スマートシティAiCT」が開所し、ICT事業者と地元事業者が手を取り合うことで、今まさに地域課題解決の取組が加速しています。
     
    こうした環境の中、交通の分野では地元交通事業者とスマートシティAiCT入居のICT企業、地元大学等により「会津SamuraiMaaSプロジェクト協議会」が設立され、まさにサムライ魂で地方におけるMaaSの実現に向けた取組が始まったんです。
     
    今回の注目事業は、この協議会が主体となって行なっており、産官学連携のICTを活用した「スマートシティ会津若松」を象徴する取組の一つです。with・afterコロナの対応に、これまで約10年取り組んできたICTの知見や経験、人間関係を最大限活用しているところがポイントだと思います。
     



    「自我作古(じがさっこ)」の思いをもって

    この事業では、ICTを活用し、交通チケットをスマートフォンで購入、そのまま利用できるようにするといった非接触の利用環境をつくりました。また、本市で最も利用の多いまちなか周遊バス「ハイカラさん」や「あかべえ」の車内の混雑状況を表示できるようにしました。
     
    「ハイカラさん」や「あかべえ」は本市の主要な観光地を周遊するバスで、観光客、特に教育旅行の学生さん達に多く利用されていましたが、コロナ禍において、こうした教育旅行生も減少し、観光業などは大きなダメージを受けています。
     
    今回構築したシステムやアプリは、長期化するコロナ禍において、密を避けながら公共交通を選択し、非接触の環境で安心して周遊観光をしていただく、with・afterコロナに向けたチャレンジであると考えています。
     
    私はこれまで、古いしきたりや過去の前例にとらわれず、後のちの先例となるものを自ら作り出していく「自我作古(じがさっこ)」の思いをもって、「スマートシティ会津若松」の取組を推進してきました。
     
    この「自我作古」の精神は、with・afterコロナを生き抜くうえでも必要と考えており、モデルとなるような先進的なチャレンジに、失敗を恐れずトライしてみる、そして、市民生活を便利にして地域を活性化する、さらにはその取組を各地に展開して、全国で同じような悩みを抱える地域の課題解決に繋げていただく、そのような強い気持ちで取組を進めていきたいと考えています。


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  • 担当者コメント

    宮崎正人 / 星泰平
    会津若松市地域づくり課 宮崎正人 / 星泰平
    将来を見据えながら体制等の構築を支援

    コロナ禍で公共交通の利用者が大きく減少し、交通事業者の皆さんは非常に厳しい経営環境でしたし、感染症対策など当面の対応が山積し、with・afterコロナを見据えた事業展開まで考える余裕はなかった状況でした。
     
    このような中、交通事業者の皆さんには、当面の経営支援として「緊急支援金事業」を行いながら、将来を見据えながらこの注目事業を提案し、取り組むための資金や協議会などの体制等の構築へ支援をさせていただくことで、一緒にwith・afterコロナに向けた公共交通のあり方について考え、事業を実施することができたのではないかと思います。


    将来のビジョンを議論するきっかけとなったことが最も大きな収穫

    交通事業者とICT事業者が、まさにひざを詰め、アプリやシステムの協議だけでなく、with・afterコロナにおける公共交通のあり方や将来のビジョンを議論するきっかけとなったことが最も収穫であったかと思います。
     
    これまでは、どちらかというと受注、発注というような関係でしたが、協議会という共通のビジョンを持った組織の中で、対等な関係で一緒に事業に取り組み議論することで、互いに刺激になった部分が大きいと感じました。例えば、我々行政や交通事業者が当然と思い込んでいた料金やチケットの考え方が、ICT事業者の目からするとユーザフレンドリーではないことなど、気づかされることが多々ありました。
     
    また、MaaSの取組は、多様な交通手段を繋ぐというだけでなく、店舗や施設などの異業種と繋がっていくことで、移動と目的地がセットになった本来的な「おでかけ」を支援することができると思います。当たり前のようなことですが、「移動」と「目的」の連携はあまり進んではいないのが現状です。このような実態に対し、ICTの活用や多様な関係者で取り組む体制づくりなどは、今回の注目事業をきっかけに少しずつ進んできていると感じています。
     
    本市のような地方都市では、人口減少、自家用自動車の普及により公共交通単体で事業を継続していくことはとても困難な環境で、コロナ禍の長期化などでさらに厳しさが増しています。MaaSの取組をきっかけに、移動手段としての公共交通と、目的地としての観光や商業などの様々な分野が繋がっていくことで相乗効果が現れ、地域全体が活性化していく、そんな将来をみなさんと一緒に目指していきたいと思います。


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  • 有識者コメント

    中川 寛子
    東京情報堂
    代表
    中川 寛子
    この取組を面白いと感じた理由

    新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を利用したIT系の取り組みのうち、福島県会津若松市に注目したのは公共交通に着目した施策が少ないことに加え、拡張性があるという点から。仕事柄自治体等のサイト、アプリ等はよく利用するが、場当たり的に全体像を描かないままに見切り発車したと思しきものが散見される。
    だが、それは税金の無駄遣い。全体像を描くことは同時にまちの未来を描くことでもあり、IT系の事業については特にその観点が大事だと思う。その意味で事業イメージ図のように目指すものを明確にした上で計画されている会津若松市の取り組みは面白く、見習うべき点があると考えた。


    この取組の特に注目してほしいポイント

    公共交通の維持は地域の将来を大きく左右する。収益性が低いというだけで路線を廃止したり、本数を減らすべきではないと思うが、これもまた、地域の全体像の中から考えるべき問題。そのためには人の移動の状況などを知り、効率的で利用しやすい運行に繋げていく必要があると思うが、この事業はそこに向かう一歩目と考えられる。
    具体的には運休情報や車内混雑情報のリアルタイムでの提供を目的としているが、将来的には「鉄道やデマンド交通なども含めてMaaSのシステムと一体的に可能とする利用環境の構築を図る」という。期待は大きいものの、実験段階にあるMaaSに先鞭を付けることになるか。取り組みそのものに加え、その先の一手にも注目したい。


    この取組と組み合わせたら相乗効果のありそうな取組

    路線バスは地元の利用者を想定しているためか、路線上にある施設その他の情報が少なく、来訪者には使いにくい。その点を改善、路線バスをマイカー代わりに使いこなせるようになると観光にも資する。人の移動に限らず、モノの移動に利用する、レンタサイクルや徒歩での移動も含めて考えることも可能ではないかと思う。


    この取組をおススメしたい自治体

    将来的にMaaSを視野に入れてという意味ではどの自治体でも必要な施策ではないかと思うが、特に収益性に問題のある公共交通が存在する、交通弱者のいる自治体では公共交通再編の一歩目として導入を考えても良いのではないだろうか。コンパクトな自治体ほど運用もしやすそうである。


    この取組に期待すること

    公共交通事業はこれまで単体で黒字であることを求められてきたが、それだけで考えると廃止、縮小に繋がるだけ。今後はまち全体を黒字化するための要素のひとつという観点で考える必要があると思うが、そのためには利用状況を可視化、改善する必要がある。会津若松市の取り組みは直接的には利用者の利便性向上を目的としているが、同時に改善のための良い材料にもなるはず。その点に期待する。


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