事業紹介

屋外空間活用検証事業

静岡県下田市

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事業の概要

屋外空間活用検証事業
  • 事例集番号

    -

  • 地域未来構想20

    ⑳事業構造改革

  • 事業実施時期

    令和2年7月~令和3年3月

  • 総事業費

    3,000千円

「屋外空間活用検証事業」は、3密を回避しやすい道路、公園、河川空間など、誰もが利用できる屋外空間に様々なアクティビティをよび起こすことによって、商業の活性化、地域コミュニティの醸成を図ることができないか、屋外空間活用の考え方を整理することを目的として実施しました。10月16日(金)〜11月8日(日)に開催する「下田がんバル」に合わせて、都市公園2箇所、漁港の物揚げ場、市道1路線の屋外空間を使って、仮説の「まちなかリビング」を創出し、観光客や市民の活動の可能性を検証しました。コロナ禍で多くの店舗がテイクアウトメニューを販売していたことから、会場には、テイクアウトメニューを読み取れるQRコードと店舗地図のボードを置きました。また、会場配達が可能な店舗メニューも掲載しました。会場づくりでは、観光客に好まれるような設えとなるよう、日本大学建築学科山中研究室の学生さんに、デザインや設営をサポートしてもらいました。

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事業の背景

コロナ禍による3密回避のために、人との接触、距離を保つという考えから、飲食店の規模が比較的小さい下田の市街地では、安全な飲食を提供できず営業に困惑していました。加えて、本地区のまちづくりの方針に、歩きたくなる中心市街地にしようという目標があり、3密回避と歩きたくなる空間づくりとを掛け合わせ、観光客や市民が居心地よくて、居たくなる屋外空間づくり、屋外を使った”新しい観光様式”を目指していくこととしました。

  • 首長インタビュー

    松木 正一郎
    静岡県下田市長松木 正一郎
    出身地
    静岡県下田市
    首長職以前の略歴
    1985年、早稲田大学理工学部を卒業後、建設会社へ入社。その後1989年に静岡県庁へ入庁し、企画・都市計画業務に従事。交通基盤部景観まちづくり課長や下田土木事務所長、賀茂地域局副局長兼賀茂危機管理監などを歴任し、2020年3月に退職。同年6月の下田市長選挙に立候補し、当選。同年7月、下田市長に就任(現在1期目)。
    ※2022年1月時点
    注目事業を実施にすることにした背景や目的

    下田市は年間250万人を超える観光客が訪れる観光都市で、多くは首都圏からお越しになります。観光産業が市の大きな柱となっている我々にとっては、やはりコロナ禍における社会活動の停滞は大きな打撃でありました。特に、訪れる観光客数が減る影響も大きかったのですが、観光客を受け入れる側としての不安が増長していたことから、これまでと変わらないよう、どのように社会活動を維持していくかが、大きな課題でした。
     
    そこでまずは、私たちがしっかりとした対策を行っていることを内外に示し、また観光客の方々にも「対策してきてください」と発信することを考えました。観光客と市民が互いに責任を持ち、協力し合う関係を市が積極的に後押しするというものです。この方式を “下田モデル”と銘打って、コロナ禍における新しい観光の在り方として提案しました。
     


    注目事業でこだわったポイントや期待している点

    屋外公共空間の有効活用は、本市の魅力を伝える点においても有利であると考えました。
     
    昨今、「ウォーカブルシティ(歩いて行けるまち・歩きやすいまち)」が注目されていますが、下田のまちなかは縦横700mほどで、まさに「歩くのにちょうどいいまち」です。黒船来航以降、重要港湾として整備されていった歴史を持ち、ナポリの旧市街地などと同様、まち並みそのものが大きな魅力をもっています。こうした都市景観を磨き、楽しんでもらう上でも、我々において屋外空間の活用は適していると言えます。伊豆石やなまこ壁を使用した歴史的な建物や、懐かしさの残る商店、漁港区域の物揚げ場など、まちなかの良さが見える場所を事業の対象地域としました。
     
    また、こうした屋外空間の活用は、食という暮らしの一部を「見える化」するきっかけにもなりました。観光客にとって、三密を避けるのみならず、まちの息遣いを感じてもらえたらと思います。



    “まちのあるべき姿”について思うこと

    いうまでもなく、まちには人々の暮らしがあります。観光という観点やまちの魅力を考える上では、人々の暮らしがまずあって、それに合わせて景観が出来上がっていく、というまちづくりの本質を重視したいです。
     
    1980年代に、アメリカで生まれたフェスティバルマーケットという商業空間開発の考え方が21世紀の日本に輸入され、非日常的な大規模商業施設が全国的に増えました。一方で、まちを都市と郊外に切り分けて、それぞれの機能を特化させていく流れも進みました。結果、どこの都市部にもビルが立ち並び、どこの郊外にも同じチェーン店が店舗を構えるといった、同じ景色がつくられていったと言われています。
     
    地方のまちの魅力とは、つまるところ人々の暮らしのシーンだと思います。まち並みを見て、「ここにはどんな暮らしがあるのだろう」と興味が沸く。そんなまちづくりが大切だと思います。


    臨時交付金をどの事業に充てるか優先順位の考え方

    緊急事態宣言等による人流の抑制は、観光を主産業とする本市の経済に対して、非常に大きな打撃を与えました。そのため、感染防止対策と生活困窮市民への経済支援に取り組み、感染予防と社会活動の両立を目指しました。経済政策を持続可能にするため、観光産業をコロナ禍においても継続できるようにするための施設整備策を進めました。


    withコロナ時代の地域づくり

    コロナ禍以前からも進められていましたが、地域課題解決に向けたデジタル化の推進に伴うテレワークやワーケーション等を推進する流れは、今後さらに加速していくと思います。美しい自然や温暖な気候に恵まれた伊豆の下田は、例えばこれからの「デジタル田園都市構想」を、実現できる要素が数多くあります。それらの価値に光を当てて、グローカルな魅力あふれるまちづくりを進めていきます。


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  • 担当者コメント

    静岡県下田市 建設課 鈴木慈美 / 鈴木健人
    非日常だったものをいかに「日常」にしていくか

    コロナ禍における新たな観光として提案した屋外公共空間の活用について、どのように日常的なものにするかというのが課題でした。毎回市内外から多くの方がお越しになる黒船祭や下田の夏の風物詩となっている下田太鼓祭りといったお祭りの際は、屋外での飲食を皆さん楽しんでいますが、裏を返せば、下田市民にとっての屋外活用は、お祭りのときのような非日常的な意味合いが強くなります。
     
    今回事業を実施した目的は、withコロナやアフターコロナを見込んだ検証であり、市民の方が屋外空間を日常的に活用できるように意識持っていただく必要がありました。屋外空間をより自然に、より日常的に活用してもらえるかがカギでした。


    親しみを持ってもらえるようにキャッチフレーズを工夫

    まずは、市民の皆さんにいかに親しみを持ってもらえるかと考えていました。その中で、この屋外空間活用事業のキャッチフレーズを付けようとなり、「まちなかリビング」と名付け、市民の皆さんにイメージしやすく、また優しい印象を持ってもらおうとしました。
     
    このフレーズは、事業の計画や運営にも関わっていただいている日本大学の学生さんのアイデアを採用しました。また、同時に対応したこととして、まちなかリビングの活用例を見てもらうことでした。当初から、観光客の方には利用してもらえるだろうと想定していましたが、市民の方も、その様子を見ながら徐々に使っていただけたようなところがありました。観光客と地域の方と、相互に作用していくのが新鮮で、新しい可能性を感じられました。


    事業終了後も継続して設置したことで、地域に段々と浸透してきた

    今回の事業は実施期間を限定して行いましたが、検証した会場の一部では、その後も、椅子やテーブルなどのストリートファニチャーを残して検証を続けてきました。やはり事業実施当初は、メディアさんに報道していただいたことなどもあり、どこかイベントチックになってしまっていた感が否めませんでしたが、その後も継続して設置したことで、徐々に日常の雰囲気に溶け込んでいったような気がします。
     
    そうした中で、市民の皆さんが屋外に設けられた憩いの場そのものに馴染んできたようで、少しずつですが実験時よりも利用者が増えてきています。地域の子供たちが会場内で勉強したり、散歩途中で市民の方が休憩で利用したりと、屋外活用が段々と浸透し、一定の成果を収めているように感じています。ある女性の方から、「みんなでお弁当を買って、2時間くらいおしゃべりした」といったお話を聞き、新しい生活様式が広がっているのを実感しています。


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  • 有識者コメント

    一井 暁子
    一般社団法人 つながる地域づくり研究所
    代表理事
    一井 暁子
    この取組を面白いと感じた理由

    新型コロナウイルス感染対策として重視されている、いわゆる3密回避は、どうしても、行動の抑制や活動の禁止につながりがちですが、本事業は、屋外公共空間を活用することで、「できること」や「新たなチャンス」を見出し、3密を回避しながらも、前向きに活性化しようとする、積極的な姿勢が魅力的です。
    また、下田市には年間250万人を超える観光客が訪れるとのことで、事業実施に当たっても、観光客や観光関連の事業者と市民の、いずれも対象と考え、それぞれの政策分野におけるこれまでにない取組と、異なる分野を横断する、新たな効果を生み出そうとしています。


    この取組の特に注目してほしいポイント

    従来の観光スポットとは違う、下田市のまち並みやそこを歩く楽しさ、また、地元の食べ物を、まち歩きしながら、あるいは屋外で楽しむという、新たな体験価値を、観光客に提供しています。
    これは、訪れたまちでしかできない体験をし、ゆっくりと時間を過ごしたい、という、最近の観光の傾向に合致していますし、コロナ禍で増えている、近隣へのお出かけや旅行にも向いています。飲食店にとっても、店舗内での飲食提供に制限がある中で、新規需要の喚起につながるメリットがあります。
    さらに、これまで日常的には利用されていなかった屋外空間を、普段使いしてもらう、という市民の行動変容も目的とし、単発のイベントではなく、長期的なまちづくりの施策となっているところが特徴です。


    この取組と組み合わせたら相乗効果のありそうな取組

    介護予防や健康づくりのための体操を屋外で実施する、まち並みをモチーフにした絵画教室や写真講座を現地で行う、子育てクラブや相談をストリートファニチャーがあるスペースで開くなど、幅広い対象に向け、多様な使い方を提示してはどうでしょう。


    この取組をオススメしたい自治体

    飲食店等の事業所の活性化やまちのにぎわいづくりを推進したい自治体であれば、路上利用の占用許可基準の緩和や公開空き地の一時使用承認とも組み合わせて、また空き地や空きスペースが増えている自治体でも、取り組むといいのではないでしょうか。


    この取組に期待すること

    屋外空間の利用促進を通じて、観光や市民生活の新たなスタイルを創り出そうとする、意欲的な取組であり、どのような使われ方や楽しみ方が生まれ、定着していくのか、大いに期待しています。
    テレワークやワーケーションとの組合せといった展開や、販売やサービス提供等の収益事業での利用による事業性の確立、多様な活動と連携したコミュニティの創出等、可能性は広がっています。


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